りり〜の誓い

今日はふたつがっかりすることがあった。

新幹線で訪ねる取材日である。朝の通勤時間に最寄り駅に着き、バッグから携帯を取ろうとしたときに、バッグの手提げ1本が根元からブチ切れたのだ。

なんてことだ、これから電車が来るのにー!

くたびれていたバッグなので未練はない。問題はこのまま行くか取り替えるかである。とっさに1本で遠出はリスクだと悟った。急いで家に帰り、きょとんとする猫を尻目に、戸棚から別のバッグを出し、45秒で中身を入れ替え、駅に戻ると、電車を一本逃しただけだった。駅近の住まいは助かる。

苦難は乗り越えた。だが第二のがっかりが待っていた。取材同行者と待ち合わる、他県の駅に着いた。

お断りしておくが、今日の私は男装である。まだすべての仕事で女性のかっこうではいけない。待ち合わせたその男性には、数日前、トランスジェンダーであることをzoomごしにカミングアウトした。隠しておくのもいやなので、だんだん増やしているのだ。彼は優しく、そうだったんですかーと励ましてくれた。そこで今日会ったときに、このあいだはおどかしてすみません、今日は男の格好で来ました〜と冗談めかして言った。するとこう言われた。

「こっちの姿の方が僕は慣れてますね〜」

こっちとは私の男装のことだ。ごぐ自然にそう言われた。自然な口調ゆえに、私の胸は静かにつぶれた。

私は、そりゃそうでしょう、だって私は男だし、女装してないし、背も高いし、バカなことをしているから…と内心思った。やっぱり男はね、トランスには否定的だよなーと、自分を慰めた。以前、シニアの男性にこってりお説教されたこともあるし…と強く励ました。一方、私のことを気遣ってくださる方もいて、今朝もメールをもらってありがたかったしーと、元気を出したのだ。おかげで取材はうまくいった。

取材先(某大学医学部)に1本の木があった。裏庭に植えられたヒポクラテスの誓いの木である。

ヒポクラテスの誓いとは、紀元前4世紀の「医学の父」が遺した「医術を私に教えた人を、我が親の如く敬い、我が財を分って、その必要あるとき助ける」で始まることばである。医者ならだれもが知っている聖句である。あらためて調べてみると、その中にこういうことばもある。

「女と男、自由人と奴隷の違いを考慮しない。」

なんとヒポクラテスは紀元前から多様性を認める人だったのだ!この気づきで、私の凹んだ胸は静かに膨らんだ。しかも今夜、日本ハムファイターズも快勝した。とても嬉しい。そこでりり〜の誓いをたてた。

りり〜はポジティブに、能天気に、トランスジェンダーを貫きます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました